2020年11月18日に半導体メーカーのNVIDIAが決算発表しました。
超好決算だったのでその内容を深堀りしながら現在のNVIDIAの状況や今後の見通しなどを記載いたします。
NVIDA 決算
結果サマリー
Q3決算結果
・EPS: $2.91(予想:$2.57)【Y/Y+63%】
・売上高: $4.73B(予想:$4.41B)【Y/Y+57%】
Q4ガイダンス
・売上高: $4.704〜4.896B(予想:$4.42B)【Y/Y+51〜58%】
※Y/Y=前年同期比
Q3の決算は素晴らしいです。NVDIAの会社規模で前年同期比は57%とグロース株のような成長率はすごいと思います。
懸念点は、Q3の決算が売上高47.3億ドルにも関わらず、Q4のガイダンスは47億ドル〜48億ドルとほぼ成長なしとアナウンスしている点です。
今回決算が良かったのに株価が下がった理由はこのガイダンスの弱さだと思います。
Non-GAAP 決算内容

全体的に以下の通りで文句なしの決算だと思います。
- 売上高のY/Y は57%UP、Q/Qは22%UP
- EPSはY/Yは63%UP、Q/Qは33%UP
- 粗利率は65.5%
事業ごとの収益推移

GamingとData Centerが売上高の占める割合が大きいです。
Gamingは2021年度でみると、Q1は13億ドル、Q2 は16億ドル、Q3は22億ドルと躍進しています。
コロナの影響でゲームのハード需要が高まりNVDIAのGPU売上が加速していると読み取れます。そのため、コロナが落ち着けばGaimingの成長は少し停滞するので楽観視できないと考えます。
Data Centerの売上は、mellanoxを買収したのもあり、前年同期比(Q3 FY20)と比較しても2倍以上と高成長しています。
前回決算(Q2 FY21)からmellanoxの売上が反映されていますが、Q2→Q3の売上増分をみると、まだそこまでのシナジー効果が感じられないので、今後も注意していきたいです。
プレスリリース(公式声明)
サマリー
GamingやData Center含め全体的に記録的な収益を達成しました。
特に最新の「NVIDIA GeForce RTX GPU」はNVIDIA史上最大の性能を提供し需要は圧倒的な状態です。「NVIDIA RTX」は、ゲームの新しいスタンダードをレイトレーシングにしました。
AIの分野でも成長を続けています。NVIDIAの「A100 compute platform」は、トップクラウド企業が世界中に展開しており急速に拡大しています。業界のAI推論ベンチマークを席巻し、既に世界で最も人気のあるAIサービスのいくつかに組み込まれています。
また、「NVDIA DPU(programmable data center processor)」と、世界で最も人気のあるCPUの生みの親であるArm社の買収計画を発表しました。
NVDIAは既に、コンピューティングがクラウドから何兆ものデバイスにまで拡大するAI時代におけるポジションを確立しています。
ハイライト
第3四半期中、NVIDIAは、SoftBank Capital LimitedとSVF Holdco (UK) LimitedからArm Limitedを400億ドルの取引で買収することで合意したことを発表しました。
この取引により、NVIDIAの最先端のAIコンピューティング・プラットフォームとArmの広大なエコシステムが融合し、AI時代の最高のコンピューティング企業が誕生することになります。
この取引は、NVIDIAの非GAAP総利益率と非GAAP一株当たり利益に直ちに付加価値を与えるもので、2022年暦年の第一四半期に完了すると予想されています。
また、NVIDIAは、英ケンブリッジに、NVIDIAとArmの技術をベースにした強力なAIスーパーコンピュータを含む、世界クラスのAIラボを建設する計画を発表し、研究フェローシップや地元の機関とのパートナーシップ、AIトレーニングコースを提供するとしています。
これとは別に、NVIDIA DGX SuperPOD™システムをベースに、ヘルスケアや創薬におけるAI研究のために設計された、英国で最も強力なAIスーパーコンピュータであるCambridge-1の建設も計画しています。
データセンター
主なトピック
- 第3四半期の売上高は、前四半期比8%増、前年同期比162%増の19.0億ドルと過去最高を記録
- Google Cloud PlatformとMicrosoft Azureに続き、Amazon Web ServicesとOracle Cloud Infrastructureが、NVIDIA A100™ GPUをベースに一般提供することが発表
- イタリアの大学間コンソーシアムCINECAによって構築された世界最速のAIスーパーコンピュータ「レオナルド」を含む、EuroHPCによってバックアップされた5台のスーパーコンピュータが、NVIDIAのデータセンター・アクセラレータまたはネットワークを使用することを発表
- NVIDIA BlueField-2 DPU (データ処理ユニット) を発表
- VMwareとの広範なパートナーシップを発表し、AIのためのエンドツーエンドのエンタープライズ・プラットフォームと、NVIDIA DPUを使用したデータセンター、クラウド、エッジのための新しいアーキテクチャを構築することを発表
- ストリーミングの品質を向上させ、視線補正、超解像、ノイズキャンセレーション、顔の再照などのAI機能を提供するAIビデオストリーミングプラットフォームであるNVIDIA Maxine™を発表
- GSKとの提携により、イメージング、ゲノミクス、AIのためのコンピューティング・プラットフォームを医薬品やワクチンの創薬プロセスに統合することを発表
ゲーミング
- 第3四半期の収益は過去最高の22億7000万ドル、前四半期比37%増、前年同期比37%増
- NVIDIA Ampereアーキテクチャと第2世代のRTXを搭載したGeForce RTX® 30シリーズGPUを発表
- NVIDIA RTXリアルタイム・レイトレーシングに世界で最も人気のあるビデオゲーム「Fortnite」を含む、「Cyberpunk 2077」、「Call of Duty: Black Ops」、「Watch Dogs: Legion」など24以上の他のタイトルに加わることを発表
- システムの待ち時間を減らすことでゲームの反応時間を向上させる技術群であるNVIDIA Reflex™を発表
- RTX加速AI効果でマイク、スピーカー、ウェブカメラの品質を向上させるプラグイン、NVIDIA Broadcast™を発表
プロフェッショナル・ビジュアライゼーション
- 第3四半期の売上高は2億3600万ドルで、前四半期比16%増、前年同期比27%減
- 世界初のNVIDIA RTXベースの3Dシミュレーションおよびコラボレーション・プラットフォームであるNVIDIA Omniverse™をオープンベータに導入
- NVIDIAのAI技術によりアニメーション化されたビデオゲーム資産をクリエイターに提供するNVIDIA Omniverse Machinima™を発表
- アドビと共同で、GPUで加速されたニューラルフィルターをAdobe PhotoshopのAIを搭載したツールに導入
自動運転
- 第3四半期の売上高は1億2500万ドルで、前四半期比13%増、前年同期比23%減
- メルセデス・ベンツと共同で、NVIDIAが次世代のMBUX AIコクピットシステムの電源を供給していることを発表
- 現代自動車(Hyundai)グループと共同で、韓国の現代自動車、起亜自動車、ジェネシスの全車種に、2022年からNVIDIA DRIVE™車載インフォテインメントシステムを標準装備することを発表
- 中国の李汽車(Li)が、自律走行車向けのソフトウェア定義プラットフォームであるNVIDIA DRIVE AGX Orin™を使用して、次世代の電気自動車を開発すると発表
まとめ
冒頭でも述べましたが、今回Q3の決算は非常に素晴らしく業績好調と言えます。ただ、Q3の業績を踏まえた上でQ4のガイダンスを見ると非常に弱気に映ります。(Q3→Q4の成長はゼロということになるため)
ゲーミングの売上がこの成長力を牽引していると思うと、コロナ需要が終われば成長速度の減速はありうると感じました。
ただ、Armの買収や、英ケンブリッジにAI研究所を設立したり今後も半導体・AIの業界をリードしていく企業であることは間違いないと思います。
また、AIの市場は今後更に大きくなると言われており、半導体チップの需要は更に増していくことは容易に想像できます。そうすればArmも含めた形でNVDIAにとって強力な追い風となります。
Armの売上は2019年で年間18億ドルであり、NVDIAのFY22のQ1から計上されると言われてます。Armはここ3年ほどあまり成長していないのが懸念点です。ただ、成長していないのはわかりきってることであり、Armの技術力だったり、その他の利点があったため買収しております。今後は両企業のシナジーを期待したいですね。
以上
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